12 メニューを発想する
メニューや料理をどう思いつき、決めていくか。私はこのように発想していきます。
ノート、またはA4の紙、なんでもいいのですが、紙を広げます。集中できるように近くのカフェに出かけることもあります。
まず、テーマ(目標)と、メニューに求められていること(ニーズ)を確認します。
蒸し暑い日が続いて、食欲も落ち気味のときのメニューがテーマだったら、さっぱりと食べられる献立で、なかにはパンチの効いたものをひとつは入れたものにしたい、というニーズがそこにはあるかもしれません。
たくさん採れた特定の野菜を七変化させるのがテーマだったら、飽きないようにいろんな料理に変身させたい、新鮮なうちに食べるもののほかに、保存食や発酵食にも活かしたいというニーズも見えてきます。
日々のごはんをつくりたいのか、おもてなしのお食事なのか、というムード的なニーズもチェック。
目的地の大まかなイメージを頭の中に、または紙の上に描いておきます。
次のカギは「いま、ここ」。目の前にある要素をよく見ることから始めます。
店に出回っている旬の野菜、今ある在庫、イチオシの食材。
まず「いま、ここ」にある要素を観察し、思いつくままにノートに羅列してみる。
そこまでいったら、「一休さん」の時間。子どもの頃テレビ漫画で見ていた、実在の一休和尚さんをモデルにしたあの一休さんです(今はわからない人も多いかな〜)。
一休さんは、気が弱くて、ドジをしては和尚さんから怒られる、小僧のキャラクター。しかし難題にぶつかったときには、座禅を組んで、待つことしばし。名トンチを思いつく。やってみる。そして問題は丸く収まり誰もがハッピー!となる、あれです。
カフェで座禅を組むわけではないですが、お題を宙に浮かしたまま、お茶を飲みながらリラックスモードでしばし過ごします。もちろんむにゃむにゃと考えたりもします。
そのうち、いろんな断片的なイメージがよぎってきます。ふむふむ、と書き留めたりして過ごします。そうするうちにごちゃごちゃしていた糸がほぐれてきて、料理のアイデアが降りてきます。やはり気になったら書き留めます。
次に、料理同士の組み合わせもお題にします。
心地よい、そして楽しい食事には、いろんな点でメリハリとバランスが大切になります。詳しくは後の項に書きますが、栄養バランス、材料、調理方法、味付けなど、多様性を意識しつつふたたび一休さん。こうして、落ちてきたものをノートに書き留めていきます。
このプロセスの中で、どの材料を使って、どんな調理法でつくるのかが見えているので、実際に作るときのレシピは、大部分が完成しています。
キッチンに戻り、確かめるように再現する。ちょうどいい分量を出していく。そのような順番で料理をつくっていきます。
この一休さん的リラックスティータイムは、メニュー決めを急いでいるときこそ、効果的です。
一休さんの時間は、目的地をクリアにして、データベースから必要なものを取り出す作業時間。このときのコツは、自分と、自分を包んでいる森羅万象の世界との境界を曖昧にして、限られた経験知識だけに頼らないつもりくらいにしておく。世界には、アイデアや美しいものや美味しいものが満ち満ちていて、地球の自転とともに今自分がお茶を飲んでいるカフェの空中にも漂っているから。
自分一人で生み出そうと思わずに、お題を一度空中に投げて、名トンチならぬ、ぴったりのメニューが降りてくるのを受け取る。
とにもかくにも、ふるいにかけられた、「いま、ここ」にとってのベストアンサーが降りてきます。ついでに気分もすっきりリフレッシュ。これまでにしでかしたトンチンカンな失敗の数々だって、いい肥やしとなって、データベース入り、しっかり役に立ってくれます。失敗の苦い思い出は引きずらないで、空中に投げて熟成を待ちましょう。
もちろん料理サイトや料理本も大いに活用するとよいのですが、この、デジタルを切って、自分とつながるメニュー発想時間は、瞑想のような、豊かな時間。
メニューづくりで目指す地点は、ハーモニーのとれた、気持ちのいい食卓です。