日々のノート

植物料理研究家YOSHIVEGGIE(ヨシベジ)のブログへようこそ。自然のリズムと同期する生き方。セルフラブから始まる地球平和。ノート術。生きづらさをギフトに変える心理学。食べもの、暮らし、マインドフルネス。

ニューアースキッチン16 顔の見える関係

 

 

16 顔の見える関係

店に行くと、オーガニック認証や有機認証の食品が並んでいます。

安心安全に材料を調達するうえで参考にする方も多いと思います。

 

私は認証のメリットも感じていますが、本当のところ、消費者と生産者の信頼関係を取り戻すことが今、もっとも必要なことだと思います。有機とは表示していないけれど大地想い人想いの野菜があり、窒素肥料過多でバランスを欠いている有機認証農産物も、あるからです。

 

1970年代にムーブメントが始まった日本の有機農業界は、有機が広がるにつれ認証制度の是否をめぐって議論が戦わされていました。

それまで、日本の有機農業は、生産者と消費者の「顔の見える関係」、支え合う関係を基本として育っていったので、認証制度というものは必要なかったのです。家族に食べさせたいものと同じものを、家族の延長のように消費者に手渡す。それが始まりだったのです。

食の安心安全への不安から、有機野菜や自然食品へのニーズが高まり、それとともに認証が必要になってきました。

議論が起こったのは当然のことだと思います。今ではすっかり当たり前になってしまいましたが、有機の認証制度が必要な食の構造そのものが、おかしい、ということをもはや忘れてしまっています。

ほんの100年前には「慣行農法(=化学農薬や肥料を投入する現代に一般的な農法)」という考えも「有機農業」という言葉もなく、人は生きていました。循環の中でちゃんと生きていけたのです。

 

認証制度は便利ですが、有機が当たり前ではない構造のパラドクスのなかでの制度、という冷めた視点を持ち続けることが、大切だと思います。

 

自給自足のネットワーク

 

私たちが現在の田舎暮らしを始めてほどなく、空いている畑を借してくれる人が現れ、野菜や穀物を育てるようになりました。成功も失敗も重ねながらの自然栽培です。草や虫に負けてしまうことや、太りきれずにささやかな収穫になることもあります。豊作決定、と喜んだのも束の間、猿に先を越されてしまうこともあります。それでも、命の循環のなかにある手応えを感じられる土のある暮らしは、二人にとって、なにものにも変え難い幸せだと感じます。

庭先でうさぎのピーターが遊ぶのを見守り、自家栽培や、勝手に元気に生えている野草を使ったごはんを食べながら、毎日「豊かだね」という言葉が湧いてきます。

人生にはいろんな課題がありますが、大地から食を直接いただく暮らしがあるというだけで、わたしたちに大きな安心感をもたらしてくれます。

 

同じような安心のインフラを、畑がなくても、田舎に住んでいなくても、持つにはどうすればいいでしょうか?

 

私たちは、小さきものたち、つまり菌類の生き方から学ぶことができます。

森の中のキノコや、菌類は地下ネットワークでもつながっていて、離れていてもインターネットのように情報交換をし、助け合いながら大地を循環させています。(「土中環境」や「菌ちゃん農法」を参照)

 

私は、日本の有機農業を研究していた頃から、ネットワーク的あるいは地域的な自給のしくみが必要だと考えてきました。

そこで、やはりかつての有機農業運動を支えてきた「顔の見える関係」がキーワードになります。

 

個々人が、あるいはコミュニティのグループが、農家さんと直接つながる、土とつながるセーフティネットをつくっておくことが大事だと思います。

土の中の小さきものたちのシステムを見習って。

 

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